井戸川克隆とローカルな世代間倫理

25 March 2021

井戸川克隆とローカルな世代間倫理

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2011年3月11日の巨大地震および津波は東京電力福島第一原子力発電所において、三つの原子炉のメルトダウンという破局的な事故を引き起こした。当時、井戸川克隆は、原子力発電所が立地し、避難指示区域となった双葉町の町長であった。彼は政府および福島県の反応に不信を抱き、自身のイニシアチブでもって町民の一部を埼玉県に避難させた。これらの町民を2年以上にわたり埼玉県に滞在させたのは、彼が双葉町の全体を福島の外に移設させる計画を持っていたことにある。より大きな構想としては、放射線量が十分低くなるまで共同体を保ち、その後に子孫が帰還するというものがあった。この計画は実現することはなく、現在も双葉町および近隣の自治体の住民たちは福島県の内外に点在して暮らしている。言い換えれば、原子力事故がもたらしたのは共同体の存続の問題だということだ。これまで世代間倫理が問うてきたのは、エネルギー危機に瀕した人類種の存続の問題だったが、井戸川克隆の計画が提起した共同体の存続の問題は、被災した共同体の外の居住者にも関わる新たな世代間倫理の問題だったと言えるだろう。

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